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神経内視鏡センター

神経内視鏡センター

脳神経外科の手術治療は、以前は開頭によるものしかありませんでした。しかしながら、医療技術の進歩に伴い、先駆けとして、外科において開腹手術よりは小さな傷から内視鏡手術が低侵襲で良いとされ、現在ではさらにロボット支援手術が発達してきています。脳外科においても同様で、より侵襲の少ない治療が望まれる中で、神経内視鏡手術やカテーテル治療が行われています。すべての病気の手術治療が置き換わるわけではありませんが、神経内視鏡が得意とする病気がありますので、その場合には威力を発揮します。

現在使用している内視鏡には2つのタイプがあります。
●硬性鏡:視界がクリアで4Kに対応しております。硬いので曲がりませんが、先端の形状が0度(まっすぐ)から30度(やや側方向き)、70度(かなり側方向き)があり、軸は曲がらなくとも用途に合わせて使い分けることができます。
●軟性鏡(脳室鏡ともいいます):その名の通り柔らかい内視鏡で、胃カメラなどと同じ構造であり、神経内視鏡はその細いものです。曲げるために細かいグラスファイバーの束が目の代わりとなっているため、解像度が硬性鏡よりも落ちます。ただし、同軸に水を注入したり、鉗子を入れたりするチャネルがあるため、様々な用途に使えます。先端は硬性鏡の0度に準じた形状ですが、途中で曲がることで視界が広いです。

  • オリンパス社 軟性鏡

  • Storz社 硬性鏡

当院にはこの2種類の内視鏡を常備しております。


有用とされている脳外科疾患
●下垂体腫瘍PitNET
下垂体腫瘍は鼻の奥に存在するため、以前から経鼻手術が行われていました。手術用顕微鏡を使用しながら深部の腫瘍を摘出していたのですが、視軸が少しでもずれると全く見えませんでしたし、顕微鏡の性能として視軸と光軸がずれていると影になりよく見えませんでした。(そのため、助手がいても手を入れられませんでした)。
また、内視鏡手術の初期は海外から少しずつ報告がでるようになっていた時期でも、日本人の鼻は小さいので、内視鏡手術には向かない、とも言われてきました。 また、脳外科医にとって慣れ親しんだ顕微鏡手術の手術手技が、内視鏡手術に代わるとほぼ無力となってしまうことも手術進歩の妨げになっておりました。それでも内視鏡手術に少しずつなじんでいき、手術器具が整ってくると、内視鏡下経鼻手術において広い視野、高精細な画像、さらに誰でも手術内容を共有できるモニターにより驚くほど技術が早急に高まっております。最近では下垂体腫瘍手術を内視鏡なしで行う施設は少なくなっております。
経験豊富な神経内視鏡認定術者が複数いることにより、高度な手術を提供できます。


  • PitNET 術前 

  • 術後


●脳内血腫 脳内血腫は主に高血圧が原因で、脳内の細い血管が裂けて出血する疾患です。脳の中ですから、脳を一部切開して血腫にたどり着かなければなりません。できるだけ切開する脳を減らしたほうがいいのです。以前は開頭により脳溝を剥離して血腫の近くの脳を少し切開して血腫に至り、血腫除去していたのですが、小さな穴(1cm強程度)から1cmのストロー状のシースを入れ、内視鏡で観察しながら血腫を除去することができます。開頭してしまうと血腫による圧迫の圧が逃げてしまい、血腫を取りにくいのですが、シースだけですと、血腫除去していくにつれ除去したスペースにまた血腫が押されて内側に寄って来るため、血腫が除去しやすく、理にかなった方法でもあります。
さらにナビゲーションを併用することで、重要な脳構造を触らないように注意できるため、その安全性は高まります。(開頭術では脳が変形するためナビゲーションは途中から正確ではなくなるためです)。我々はそれをまとめて報告しております。
最新の脳卒中ガイドラインに沿って、手術適応を考慮し、最善の治療を行っております。


  • 被殻出血 術前

  • 術後

  • 小脳出血 術前

  • 術後


●脳室内疾患 脳には脳室という部屋があり、髄液が貯まっています。恐らく頭蓋内に病変が出現した場合、その部屋がつぶれることで緩衝材として機能しているのです。その部屋があることで、内視鏡手術が行えます。脳室という部屋に内視鏡が入れば、視野が確保されるため、例えば脳室内の腫瘍を摘出したり、水頭症の治療(第三脳室底開窓術など)をしたり、脳室に関連する病気に対応ができます。手術中の脳室内は人工髄液で還流し、きれいな状態を保ちます。


脳腫瘍症例:脳室内経由で生検術を行いました。


●慢性硬膜下血腫 頭部外傷後、1-3か月してから硬膜とくも膜の間(骨と脳の間)に血腫ができる不思議な病気があります。局所麻酔で小さな穴を開けるだけで行う手術で良くなることが多いです。しかし、同じ病気でも、時に血腫内部に隔壁が形成されており、血腫をすべて除去できず、血腫再発を繰り返すことがあります。小さな穴から行う手術という性質上、内部がよく確認できなかったため、内視鏡を使用しますと、血腫内腔の構造が分かり、隔壁を除去しながら更に奥に隠れていた血腫を除去できます。しっかり血腫を除去することで、再発予防につながると考えています。


  • 多房性慢性硬膜
    下血腫

  • 術後1週間 

  • 術後1か月


1: Katsuki M, Kakizawa Y, Nishikawa A, Yamamoto Y, Uchiyama T. Endoscopic hematoma removal of supratentorial intracerebral hemorrhage under local anesthesia reduces operative time compared to craniotomy. Sci Rep. 2020 Jun 25;10(1):10389.

2: Katsuki M, Kakizawa Y, Wada N, Yamamoto Y, Uchiyama T, Nakamura T, Watanabe M. Endoscopically Observed Outer Membrane Color of Chronic Subdural Hematoma and Histopathological Staging: White as a Risk Factor for Recurrence. Neurol Med Chir (Tokyo). 2020 Mar 15;60(3):126-135.

3: Katsuki M, Kakizawa Y, Nishikawa A, Yamamoto Y, Uchiyama T. Lower total protein and absence of neuronavigation are novel poor prognostic factors of endoscopic hematoma removal for intracerebral hemorrhage. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Sep;29(9):105050.

4: Katsuki M, Kakizawa Y, Nishikawa A, Kunitoki K, Yamamoto Y, Wada N, Uchiyama T. Fifteen Cases of Endoscopic Treatment of Acute Subdural Hematoma with Small Craniotomy under Local Anesthesia: Endoscopic Hematoma Removal Reduces the Intraoperative Bleeding Amount and the Operative Time Compared with Craniotomy in Patients Aged 70 or Older. Neurol Med Chir (Tokyo). 2020 Sep 15;60(9):439-449.

神経内視鏡手術は低侵襲というメリットがある分、危険性というデメリットも伴う可能性があります。毎日行われるカンファレンスにおいて、それらを十分に考慮した上で治療を行っております。また当院では、信州大学脳神経外科学教室(主催 堀内哲吉教授)と連携して、治療に携わっております。

神経内視鏡センター長

柿澤幸成

経歴

1992年 宮崎大学医学部卒
2023年 信州大学医学博士
2000年 信州大学医学部附属病院助教授
2007年 長野市民病院 脳神経外科部長
2014年 諏訪赤十字病院 第一脳神経外科部長
2024年 小林脳神経外科病医院内「神経内視鏡センター長」

資格

  • 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
  • 日本神経内視鏡学会 技術認定医
  • 日本内分泌学会 専門医
  • 日本脳卒中の外科学会 技術指導医
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